ぼぶみです。
突然ですが、「アミノ酸スコア」と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ダイエット中やボディメイク時の食材やプロテイン選びで失敗しないためには、それぞれのアミノ酸スコアを知っておいた方が便利です。
なぜなら、アミノ酸スコアが低い食品だとタンパク質の吸収効率が悪くなり、せっかく摂取した栄養が無駄になってしまうからです。
私たちの身体の元となり、生きるうえで無くてはならないタンパク質。
このタンパク質の質について詳しく解説していきます。
アミノ酸スコアの前情報としての「プロテインスコア」
タンパク質は、20種類のアミノ酸からできており、
- 体内で作ることのできない9種類の必須アミノ酸
- 体内で作ることのできる11種類の非必須アミノ酸
の2種類に分けることができます。
プロテインスコアとは名前の通り、プロテインの質を表す点数です。
必須アミノ酸のバランスが優れている卵を100として、他の食材を数値で表したものです。
牛肉や鶏肉などの動物性タンパク質の方が、大豆やブロッコリーのような植物性タンパク質よりも数値が高くなっています。
プロテインスコアが100に近い食品ほど、必須アミノ酸が不足なく含まれているということです。
代表的なタンパク源で言うと、
牛肉は79、鶏肉は85、大豆は56です。
始まりは1955年、国際連合食糧農業機関(FAO)のタンパク質必要量委員会が、人体のアミノ酸必要量を基準とした比較タンパク質(基準タンパク質とも言う)を設定しました。
ちょっと分かりにくいですかね?
私たちの身体を作るのに必要なアミノ酸組成と、食品に含まれるアミノ酸組成を比べて、どれだけ足りているの?ということを比べています。
このことから、プロテインスコアのほうが実用的なのではないか、と言う声もあります。
プロテインスコアをふまえて、「アミノ酸スコア」とは
身体のアミノ酸組成と食品のアミノ酸組成を比較しているプロテインスコアに対して、
食品に含まれる必須アミノ酸の9種類の配合バランスを表したものが「アミノ酸スコア」です。
「アミノ酸価」とも言います。
1973年、FAOは世界保健機関(WHO)と協力して比較タンパク質のアミノ酸パターンを改定しました。そしてプロテインスコアを「アミノ酸スコア」と呼びなおします。
その結果、代表的なタンパク源である肉類・魚類のアミノ酸スコアの多くは100となり、大豆のアミノ酸スコアは86となりました。
1985年にはFAOとWHO、国際連合大学(UNU)が協力して、さらにアミノ酸パターンを改定し、それによると大豆のアミノ酸スコアは100になっています。
アミノ酸スコアは以下の計算式で算出することができます。
食品タンパク質の第一制限アミノ酸含有量(mg/g:タンパク質)÷アミノ酸評定パターン当該アミノ酸含量(mg/g:タンパク質)×100
計算に使う言葉から既に分からないですね。
それぞれの簡単な解説です。
- 第一制限アミノ酸含有量
最も不足している必須アミノ酸の事。
- アミノ酸評定パターン
必須アミノ酸の中でどれが第一制限アミノ酸なのか、いくつあれば良いのかを調べる為に、FAO・WHO・UNUによって定義されたものの事。
アミノ酸スコアは9種類の必須アミノ酸の配合バランスのことですが、
「第一制限アミノ酸が理想値に対してどれだけ含まれているかを数値化したもの」
とも言い換えることもできます。
例えば、とある食品に含まれる必須アミノ酸のうち7つは100、1つは80、1つは65だったとします。
この時9つの平均値になるのではなく、65がアミノ酸スコアとなります。
言葉だけでは分かりにくいので、
以下の表をもとに実際に計算してみましょう。
必須アミノ酸名 | アミノ酸 評定パターン | 【例1】 鶏卵 | 【例2】 トウモロコシ |
イソロイシン | 180 | 330 | 240 |
ロイシン | 410 | 570 | 960 |
リジン | 360 | 480 | 110 |
含硫アミノ酸 (メチオニン+シスチン) | 160 | 400 | 310 |
芳香族アミノ酸 (フェニルアラニン+チロシン) | 390 | 590 | 590 |
スレオニン | 210 | 350 | 200 |
トリプトファン | 70 | 91 | 33 |
バリン | 220 | 420 | 300 |
ヒスチジン | 120 | 190 | 190 |
鶏卵は9種類すべての必須アミノ酸がアミノ酸評定パターン以上含まれているので、
アミノ酸スコアは100です。
では、トウモロコシはどうでしょうか?
「リジン」と「スレオニン」と「トリプトファン」が不足していますね。
それぞれ計算すると
- リジン
110÷360×100=31 - スレオニン
200÷210×100=95 - トリプトファン
33÷70×100=42
となるため、トウモロコシのアミノ酸スコアは31となります。
参考
J-STAGE – 食事及び食品たんぱく質のアミノ酸スコア
日本食品標準成分表2015年版(七訂) アミノ酸成分表編
アミノ酸スコアが高いと何が嬉しいの?
ここまでで、「アミノ酸スコアが高い=良質なタンパク質」という事は分かりましたね。
では、アミノ酸スコアが高いことって具体的には何が嬉しいんでしょうか?
メリットとしては以下の2点があげられます。
- 効率的にタンパク質を吸収することができる
- 腎臓への負担を軽減することができる
効率的にタンパク質を吸収することができる
上記で計算したように、たとえ必須アミノ酸9種類のうち8種類が基準量をクリアしていても、残り1種類の含有量基準値がクリアされていなければ、その基準に合わせてアミノ酸スコアが下がります。
アミノ酸スコアが下がることは、タンパク質の利用効率低下を意味します。
アミノ酸スコアが低ければ、タンパク質が20g含まれていたとしても、20gを吸収できないということです。
アミノ酸スコアは、各必須アミノ酸を板に見立てた桶に例えられます。
例えば左の桶では、リジンの板が短く水が漏れ出ていますね。
この漏れた水(アミノ酸)は身体のタンパク質の合成には使われず、代謝後に窒素化合物などの老廃物になります。
これがタンパク質が20g含まれていたとしても、20gを吸収できないことの理由であり、
アミノ酸スコアは9種類の必須アミノ酸の配合バランスのことであるという事です。
腎臓への負担を軽減することができる
アミノ酸スコアが低い食品を摂ると、
余剰分が老廃物になって身体に溜まることは理解できたかと思います。
では、老廃物の排出を行っているのはどこでしょう?
その答えは腎臓です。
アミノ酸スコアが高いタンパク源であっても、代謝産物である老廃物は溜まっていき、排泄するために腎臓を駆使します。
これがアミノ酸スコアの低い食材になった場合、元々のタンパク質の吸収効率が悪いため通常よりも過剰な負担がかかります。
腎機能が低下している方の場合、この老廃物は腎臓から排泄されず体内に蓄積されるようになり、腎機能をさらに悪化させたり尿毒症を起こします。
そのため、なるべく老廃物が体内に蓄積しないような食事を摂ることが大事です。
腎臓機能は加齢とともに衰えてきますので、
健康の観点からもアミノ酸スコアが高い食品からタンパク質を摂取することを意識しましょう。
「アミノ酸スコアが低い=食べない方がいい」という意味ではない
ここまででアミノ酸スコアの重要性がお分りいただけたかと思いますが、アミノ酸スコアが低い食品は食べない方がいいのか?と言うとそんなことはありません。
アミノ酸スコアが低い食品とは何でしょうか?
先ほど例に挙げたトウモロコシや、白米などの炭水化物がアミノ酸スコアが低い食品のひとつとして挙げられますね。
これらは食べない方がいいのでしょうか?
答えはNoです。
炭水化物は筋肉を動かしたり、回復させるためのエネルギー源となります。
これを食べないのは絶対にNGです。
ではアミノ酸スコアが低い食品を食べる場合はどうすればいいでしょう?
「アミノ酸スコアは桶に例えられる」と前述しました。
桶から水が漏れていたらどうしますか?
選択肢は2つ。
- 新しい桶を買う
- 桶を修理する
どちらかですよね。
「新しい桶を買う」というのは、
よりアミノ酸スコアが高い食品を口にするという事です。
「桶を修理する」と言うのは、
足りないアミノ酸をほかの食品で補うという事です。
一番いい例は納豆ご飯です。
白米はアミノ酸スコアが61で第一制限アミノ酸がリジンです。
ここでリジンを豊富に含む大豆製品である、納豆を組み合わせると不足分がカバーされ、アミノ酸スコアを100に近づけることができます。
肉食文化が無かった江戸時代以前の日本人が丈夫な筋肉をつけることができていたのは、豆類や穀物類を組み合わせることで、身体を作るのに十分なアミノ酸を補給出来ていたからだと言えます。
アミノ酸スコアが100の食材とは?その具体例
アミノ酸スコアが低かったら食べ合わせで解決すればいい事は分かったけど、
じゃあアミノ酸スコアが100の食品は何があるの?
いちいち調べるのは面倒くさい!
そんなあなたのために
- 魚介類
- 肉類
- 卵類
- 豆類
- 乳製品
の5種類に分けて解説します。
魚介類
具体的な食材名で言うと
- アジ
- アナゴ
- アユ
- イワシ
- カツオ
- カレイ
- 鰹節
- 金目鯛
- ブリ
- フグ
が挙げられます。
カツオやマグロの赤身は、鉄分が豊富で貧血予防に効果的です。
青魚にDHAやEPAなどの良質な脂が含まれるので、生活習慣病の予防効果も期待できます。
手軽に摂取したい場合は、高タンパクで低脂肪・低カロリーのかまぼこがおすすめです。
肉類
具体的な食材名で言うと
- 牛肉
- 豚肉
- 豚レバー
- 鶏肉
- 鶏レバー
が挙げられます。
脂肪の少ない赤身肉に良質なタンパク質が含まれます。
ミネラルも多く含まれているので、タンパク質の吸収を高めてくれます。
牛・豚の赤身は鉄分が豊富で、貧血予防になり、カルニチンも含むので脂肪燃焼効果も期待できます。
鶏ささみ・鶏むね肉は高タンパク質・低カロリーの代表的食材で、ダイエット中やトレーニング中のタンパク源として重宝されます。
卵類
具体的な食材名で言うと
- 鶏卵
- うずらの卵
が挙げられます。
卵は食物繊維とビタミンC以外のカルシウム、鉄などほとんどの栄養素が含まれる完全食とも言われています。
卵白・卵黄それぞれに、多くのタンパク質が含まれます。
ゆで卵であればそのまま食べたり、ほかの食材と組み合わせたりと、アレンジが効くので普段の食事にちょい足ししたり、おやつに丁度いいですね。
豆類
具体的な食材名で言うと
- 大豆
- きな粉
- 納豆
- 豆腐
- 豆乳
が挙げられます。
一般的に植物性のタンパク質は、アミノ酸スコアが低くなりがちですが、大豆は100の食材です。
たとえば、ほかの植物性タンパク質をみると、小豆は82、米は65、小麦は42です。
発酵食品である納豆は、腸の働きも整えます。
すぐに食べられるため、積極的に食事に取り入れましょう。
乳製品
具体的な食材名で言うと
- チーズ
- ヨーグルト
- 牛乳
が挙げられます。
筋肉の材料となるBCAAというアミノ酸が豊富です。
ヨーグルトやチーズは、タンパク質の一部がアミノ酸やペプチドに分解されているため、吸収性が高いことも特徴です。
手軽に摂取できますが、デメリットとして脂質が多くなるため、カロリーが気になる人は低脂肪製品やカッテージチーズを選びましょう。
アミノ酸スコアがダイエットにどう役立つの?
ではアミノ酸スコアがダイエットにどう役立つのでしょうか?
結論、きれいに痩せることに役立ちます。
ダイエットの基本はアンダーカロリーですが、だからと言って低カロリーを意識して主食抜きなどバランスの偏った食事を摂ると、必須栄養素が偏るだけではなく、本来必要なエネルギー量を確保しにくくなります。
この状態になると身体は、生きていくための対策として筋肉を分解しエネルギーを作り出します。
これを糖新生と言います。
筋肉量が少なくなると、体の基礎代謝量が減少するため、かえって太りやすくやせにくい体質になりやすいです。
筋肉が落ちてしまうと痩せにくいのはもちろん、痩せた後の見た目にも影響があります。
痩せたのにお腹がぷにぷにしていたり、二の腕がプルプルしていたり、メリハリの無いボディラインになってしまいます。
せっかく痩せるからにはカッコいい・キレイな身体でいたいですよね?
カロリー制限をするとある程度筋肉が落ちてしまう事は仕方ありません。
ですが、落ちてしまう筋肉を最小限に抑えたり、落ちてしまった筋肉を戻すためにはタンパク質が必要不可欠です。
効率よく筋肉を戻すためには、効率よく吸収することができるタンパク質が良いですよね?
だから、アミノ酸スコアが高い食品を積極的に食べることはダイエットをするうえでも大事なことになります。
まとめ
本記事をまとめると
- 「アミノ酸スコア」とは9種類の必須アミノ酸の配合バランスのこと
- 身体に必要なアミノ酸の基準値以下だと余剰分が吸収できない
- 食べ合わせで足りない部分を補う事で無駄なくタンパク質を吸収できる
- ダイエット時にキレイな身体をつくるためにもアミノ酸スコアは重要
となります。
アミノ酸スコアばかり意識してほかの栄養バランスを崩しては本末転倒です。
タンパク質の内容だけでなく、炭水化物や脂質、ビタミン、食物繊維などのバランスも考えて、
身体に良い食事を心がけましょう。
それではまた